螺旋街道


光と影11

「……やられましたね…対有機生命体ですか…」
ピタリと動きを止めた、古泉B。 その身体は、半透明になっていた。
「お前……本当は…わかって…たんじゃ…ないのか?」
息も絶え絶えに問えば、アイツは憎たらしい笑みを浮かべる。
「僕は…古泉一樹は……あなたに嘘をつきました」
「嘘?」
「僕は、優を愛している……けれど何故か、同時にあなたにも興味がある」
「………」
コイツは一体何を言いたいんだろうか?
「あなたを消してしまえば、もう一人の僕は、優を愛する、世界が壊れ、あなた はいなかった事になり僕も消えることができるかもしれない」
―――ただ、逃げたかっただけなんです。優を愛しているなんて嘘。仮面のよう に自分に言い聞かせた、事実のような……。
「キョン…く…ん、僕は…あなたを愛して……良かったんでしょ……うか」
消えかけた手で、俺の手を包む。 冷たい。 血が、温もりが…感じられない。
「……俺は……愛して欲しいから……」
「愚問でしたね…すみません……キョンくん……僕は…」
これが最後の言葉だった。 一連の騒動を起こした、もう一人の古泉一樹は消えた。 この世に、一欠片も残すことなく。 ひっそりと俺の目の前で…。


―――――――――――

「あなたの中のウィルスも消えた、直に元に戻る」
古泉Bを見送った後、長門の家に戻った。 古泉が目の前にいる。
古泉Bの最後の言葉が反響して、どうするべきなのか。 わからない。
『消えたい』とアイツは言った。
「古泉、消えたいか?」
「……は?」
アイツらしからぬ、間抜けな顔をしている。 当たり前だろう。 変な質問をしてしまった。
古泉が、消えたいと答えたら、俺はどうすればいいかわからない癖に。
「そう……ですね、少なくとも貴方に会う前までは、消えたいとは……願ってい ました」
そうか。
「キョンくんに会って、恋をしてからは……消えたいなんて思ったことありませ ん。貴方を守りたい、僕のこの超能力をキョンくんを守るために使えるのなら、 僕はこのままの古泉一樹を望みます」
じっと真剣にみつめられた。
「僕は……キョンくん、あなたにあって変わったんですよ。今までのような古泉 一樹ではありません。心から笑えて、泣いて、愛せる貴方ができましたから」
ぎゅっと抱きしめられた。 暖かい。 古泉のぬくもり。
「古泉……」
「はい」
「大好きだ…っ」
「はいっ、僕も大好きですよ。キョンくん」
今まで、曖昧にしてきた言葉。 大好きで、大好きで。 優なんかに取られたくなくて……嗚呼、なんて我儘。
だけど、本当に優なんかには取られたくなかった。 古泉一樹の偽物は、なんのために表れたのか…。 ハルヒの気まぐれか、または、俺がハルヒに何かを吹き込んでしまったのか。
長門にさえ、わからないという。 ただ、一つ。 この事件の後。 俺は古泉に正直に自分の気持ちを話すことが出来、俺たちを繋ぐ赤い糸はより一 層、強く太くなったと思う。

END

これ、初めて書いた古キョンの長編だったんです。
全サイト刹那の時に連載して、完結したものを引っ張ってきました(`・ω・´)

しかし、読み返してみると恥ずかしー!
こんな駄文でしかもよくわかんない…
読んでいただきありがとうございますー><