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君がいたらから 01

ピリリリリリリ…。

ピッ
「もっしもーし、銀さんなら今いませんよ〜」
『いるじゃねぇかよ……銀時、いまから来れるか?』
「なんのようですかー銀さんこう見えても忙しいんだからねッ」
『ツンデレキャラ気取っても無駄だボケ…いいから来い。わかったな、屯所で待ってるからよ』
「あ!おい…っ、ちょ…ちっ、切りやがった」

通話終了と出ているディスプレイを一度タップしてホーム画面に戻せば土方から何通かメールが来ていた。 そしてなるほど、と一人首をふる。
メールで返信がなかったから直接電話ってことな。と一人ごちりつつ外出の支度をしてしまうあたり、つくづく自分は土方の命令には弱いのだと実感する。
「あれ、銀さんどこか出かけるんですか?」
「おう、ちょっとな」
玄関に向かう途中でお茶を入れたらしい新八とかち合い、怪訝な顔をする彼の頭を優しく叩く。 そして意味ありげに口元を歪め、スマホを軽くふればそれだけで、伝わったらしい新八の口からため息がこぼれた。
「今日帰ってくるんですか?」
「帰る帰るー」
土方のところへ行くイコール、今夜は帰らないという方程式が成り立っているようだ。 見透かされてんのね、と小さくつぶやけば、当たり前でしょう。と如何にも新八らしい答えが帰ってきて。 俺は軽く笑うと玄関の扉をしめるついでに、後ろ手で新八に手を振ってやった。
「いってくらぁ」
とんとん、とリズムよく階段を下りて、さてさてと手をすり合わせる。 まだ5月だというのに、真夏並みの暑さをくれる太陽を睨みながら、陽炎が浮かび上がる土を踏みしめ、真選組の屯所へと向かった。