螺旋街道


knight and lie06

「セルフィ、電話を貸してくれ」
キョロキョロとあたりを見渡していたスコールからにゅっと手が伸びてきて。 セルフィはその手が電話を待ちわびていることを知り、不思議に思いながらもその手に小型の持ち運び携帯用通信機、通称携帯を渡した。 何処かへ性急にダイヤルしたかと思うと、舌打ちをして電話を投げそうな勢いで切る。
「…どうかしたの?」
何をしているのか堪らなく気になったセルフィは伏せがちの目をかすかに上げてスコールを見つめる。 彼が、人からじっと見られるのを嫌っているのを知っていて、わざと長い時間をかけて見つめて聞き出そうとしてみた。
「…っ」
ふいっと顔をそらすスコール。 その顔にはありありと不安と焦燥が浮かんでおり、セルフィはますます不安を募らせながら彼を見つめる。
「…見たんだ」
とうとう、スコールは口から言葉を吐きだした。
「何を?」
「ガンブレードを」
ぴしり、と空気が凍りついた。
「…ガンブレード?」
セルフィはそんな馬鹿なと言いたげな口調で尋ねる。
「…ガンブレードでその怪我をしたの?」
スコールは切られたであろう、左肩の痛みに一瞬眉をひそめ、しかし機敏に立ち上がると、セルフィの問に答えることなく歩き出す。 外へ出てみれば、ぽってりとした夕日がいまにも落っこちてしまいそうなほど地面に近づいていた。
スコールはため息をついて、ちらりと携帯へ視線を落とす。
「…こういう時に限って出ないんだな」
あの太刀筋は紛れもなく彼のものだった。 あの顔は見間違えなく彼だったのだ。 だからいつも以上に出て欲しかったのに。
「…また消えるのか?」
ぎゅっと握った携帯を力任せに投げ捨てた。 そして未練を断ち切るかのように、くるりと踵を返す。
投げ捨てた携帯から着信を告げる着信音が響いていたのにも気づかず。