螺旋街道


knight and lie04

サイファーは、一人指揮官室の椅子に座りひとつの書類とにらめっこしていた。 それは現在、スコールたちが赴いている任務の詳細が書かれた書類である。 そういえば、とサイファーが顔を上げて見たのは、なぜかいない、キスティスの席。 任務は、スコール、セルフィ、アーヴァインの三人でやる予定ではなかったのか…、ともう一度書類を見直す。
そこにはやっぱり三人の名前しかなかった。
「どこ行きやがったんだよ、センセーはよ…」
ぶちぶちと文句を言いつつ、手元の書類を傍らに引っ込め、溜まりに溜まった書類さばきに再び意識を戻す。 二枚、三枚、と重ねていって、サイファーの手は止まった。
「飯…くってるかな…」
つぶやいてすぐ、意識を再び書類に戻す。 がまた三枚、四枚、済まさぬうちに手が止まり「ちゃんと寝てんのか…?あいつ、無理してねえよな…」などとつぶやいてしまっている。 とうとう、我慢できなくなったサイファーは、発狂ついでに気になるあの子の名前を呼んだあと、席を立ち、指揮官室をあとにした。


*     *     *


「いいんちょー?どうかしたー?」
ぶるりと身震いをしたスコールの肩に手をおき、任務にもかかわらず常にハイテンションなセルフィは、その場で数回ステップを踏んだ。
「いや…」
誰かが自分の名前を呼んだ気がする…と後ろを一応振り返ってみるが、誰もいない。 というか、むしろ自分の名前を呼ばれたきがする…なんて、言ってみればなんだか怖がってるみたいで、みっともないと思う。
スコールは、小さく頭を振った。 セルフィはステップを踏みながら、スコールの後をついていく。
「ところで…アーヴィンは?」
ステップを踏むのをやめ、あたりを偵察するように、見回すセルフィの目に幼馴染の姿が映らない。 そういえば、と今更気付いたスコールもちょっとだけ首を動かして探してみるが、なるほどセルフィの言う通り、見当たらない。
「アーヴァインは、ガーデンよ」
「は?」
キスティスの言葉にスコールが、思わず聞き返す。 何やら変な単語が聞こえた気がしたのだ。
「聞こえなかった?アーヴァインはガーデンよ」
思わず絶句するスコール。 ふつふつと沸く怒りの発散場所が今日はいないことを、スコールは残念に思いつつ、目の前のキスティスを凝視する。 だって、いや待てそういえばキスティスがここにいること自体変なのに、今まで気づかなかった自分が悪いのか、しかし、学園長に許可をもらっての編成だったためそう安安と変えられるはずが…。
「いいんちょ!」
セルフィの声に思考をやめて顔をあげる。 そして、驚いた。
目の前に、確かにここにあるはずのティンバーが廃墟寸前のような状態になっている様子がはっきりと目に飛び込んできたのだ。
「全員整列、武器をいつでも構えられる用意はいいか?」
頭のスイッチを切り替えて、指揮官としての自分で指示をだす。 目の前のティンバーからはあちこちから煙が上がっていた。